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日常に刺激的なスパイスを届ける人々のルーツを知る旅〜台湾料理屋「台湾マダム」がまちに加えるスパイスとは?〜

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生野区に住む60の国の人たち。区内には、その人たちが営むその国独自のスパイスを活かした飲食店が多く点在する。
今回は、EXPOいくのヒートアッププロジェクトの参加者と飲食店を訪問し、この生野というまちの日常に刺激的なスパイスを届ける料理を食すことで、その国の知られざる文化に触れる。その中で料理を提供する人々のルーツに触れ、何を感じ、どうまちの景色が変わったかを記録する。3店舗目は鶴橋本通から横道を入ってすぐの場所にお店を構える台湾料理屋「台湾マダム」にお邪魔した。

※参加者は、🍛一皿目:パートナーの生まれ故郷で、自身のルーツ「客家の味」を求めて「台湾マダム、セン・シセン」を読んだ上で訪問しています。

  

客家伝統の味を楽しめるお店

多国籍カレー(スパイス)フェスの最後にお邪魔したのは鶴橋本通り横にある「台湾マダム」さん。周りを民家で囲まれた道からポツンと可愛らしい台湾伝統の提灯が迎えてくれた。入口を開けるとなんとも上品な店内が印象的だ。「いらっしゃいませ」と白い制服を纏い、丁寧に対応していただき席についた。今回は、台湾マダムを切り盛りする台湾出身のセンさんと夫の横山さんに話を聞いた。

  

左:横山さん 右:センさん

  

センさんは日本にきて23年、元々は台湾の客家民族出身(台湾に古くから移民した漢民族の1つ)。小さい頃から食べることが好きで、いつか飲食店を開くことを夢見ていたのだそう。その時に出会ったのが地元が生野区の横山さん。飲食店を始めるとなった時は、すぐに生野区で出すことに決まった。普段は餃子などの中華料理を出しているが、貸切の場合のみ客家民族料理(台湾の郷土料理)をコースで提供している。

1皿目には、鳳梨木耳(フォンリームゥア)(木耳とパイナップルのあえもの)を提供いただいた。

  

参加者A:「パイナップルの風味が良い感じに出ていて美味しいです!」

センさん:

「客家の伝統料理です。台湾では未成熟のパイナップルと木耳を合わせて炒めるのですが、ここではお酢と和えて作っております。」

参加者A:

「ハッカってどう書くんですか?」

横山さん:

「客の家と書いてハッカと読みます。東京には1件客家料理を出しているお店があるんですが、大阪にはうちくらいしかありませんね。」

  

客家料理が日本では珍しいことを理解しながら、食べ進めると2皿目に菜脯蛋(ツァイプダン)(切干大根の卵焼き)が提供された。

  

菜脯蛋(切干大根の卵焼き)

  

センさん:

「客家料理は、元々山に住んでいる民族がつくる料理なので、保存食が多いんですよ。なので保存が効くように基本的に塩辛くて、脂っこくて、香りが高いものが多いんです。漬物も多く、今回は切り干し大根の甘みを活かして卵焼きを作りました。」

参加者B:

「味付けは結構、日本と違うんですか?」

センさん:

「そうですね。台湾は基本的に薄い味です。ラーメンなどのスープ類に関してはすごく薄い味が多いと思います。私が日本に来てから大阪の味はそこまで濃くない味だったんですが、昔いた名古屋の食べ物は味が濃くて合わないこともあり、食べれないものも多かったです。」

参加者A:

「名古屋の名物料理は味の濃いものも多いですもんね。」

  

と2皿をペロリと平げた参加者を横目に、本当に味がなめらかで、食べやすいことを実感した。

  

味付けが難しい。苦労した試行錯誤の日々

3皿目には、桔醬白斬雞(ジィージャン パイザンチー)(蒸し鶏の金柑ソース)をいただいた。見た目は蒸し鶏に金柑のソースがかかったシンプルなものだが、金柑ソースの柑橘系の匂いが鼻を包み込む。

  

桔醬白斬雞(蒸し鶏の金柑ソース)

  

横山さん:

「このソースは客家の人たちがよく使うもので、台湾にしかないものなんですよ。日本で作ろうと思ってもやっぱり味が微妙に違うんですよね」

参加者B:

「料理の勉強ってどんな感じでしてはるんですか?」

センさん:

「元々はコロナ禍で始まったお店だったので、そのころはオンラインで私のお母さんが旦那さんに教えていました。その作った料理を私が試食する日々でした。」

参加者B:

「やっぱり日本の材料を使うとできる料理も全く違うんですか?」

横山さん:

「油や醤油が特に違います。台湾では落花生の油を使うので、微妙な違いなんですがこだわって使っています。」

  

些細な味の違いにもこだわり抜いてできた客家民族伝統の料理は確かに美味しい。出てくる料理全てが今までに食べたことのない味覚を刺激するものなので食事が楽しく、日常にスパイスを加えてくれる。4皿目には、客家小炒(カージャーシャオチャオ)(客家(ハッカ)炒め)をいただいた。

客家小炒(客家(ハッカ)炒め)

  

センさん:

「この料理は、台湾の先祖に対してのお供物の残りからできた料理なんです。魚の代わりにスルメをつかい、余った野菜などを合わせて炒めたものになります。」

*台湾ではお魚をお供えする習慣がある

参加者A:

「スルメの香りが効いていてすごく美味しいですね」

参加者B:

「食べたことがないものがたくさん出てくるから楽しいですね。ん?これは豆腐ですか?」

横山さん:

「そうです。台湾では日本では馴染みのない干した豆腐を使うんです。」

  

干した豆腐は確かに噛むまではお肉と間違うほどに見た目が似ていて、日本人にとっては、新たな発見があり、見て食べて双方で楽しい。また文化やルーツを感じながらその味を噛み締めることができるのも台湾マダムさんの醍醐味かもしれない。

  

親しみやすい名前のお店

5皿目に酸菜肉片(スヮンツァイ ロォゥピィェン タン)(酸菜(サンザイ)と豚肉のスープ)、6皿目に梅干扣肉(メイカン コウロウ)(梅干菜(メイガンザイ)の豚角煮)と続いた。

  

梅干扣肉(梅干菜(メイガンザイ)の豚角煮)

  

センさん:

「豚角煮の上に乗っているのは、高菜の漬物になります。こちらは一度、干した漬物を使っています。」

参加者C:

「一度干しているのは、保存食として長持ちさせるためなんですか?」

センさん:

「そうですね。年間を通して食料を確保するために干しています。」

  

山に住む客家民族の文化を料理を通してしっかりと感じながら食事を終えると、最後にあったかい客家梅茶(カージャー メイチャ)が運ばれてきた。

  

センさん:

「これは夏バテ予防として飲むお茶になります。中には烏龍茶や唐辛子が入っています。血行がよくなりますよ。」

参加者B:

「ちょっとピリ辛ですね。料理のこだわりが2人にあると思うんですけど、喧嘩にはならないんですか?」

横山さん:

「奥さんが強いんで。」と即答

参加者A:

「台湾マダムという名前はどう決まったんですか?」

センさん:

「もう1つの候補として、西門(台湾の場所の名前)というのがあったんです。それを含めて他の友達に聞いたら満場一致で台湾マダムの方が親しみやすいとのことで決まりました。」

  

台湾の客家料理を楽しめるお店「台湾マダム」。名前を聞くだけでなんだか親しみを感じるそのお店は、客家料理の味を提供するために日々こだわり、今日も2人仲良く食事を楽しみながら料理の勉強をしているのだろう。そんな本格的な客家の味を一度試してはいかがだろうか。

  

★台湾マダム
住所:大阪市生野区鶴橋2丁目14-18
営業時間:
ランチ(金,土,日のみ)11:30-15:00
ディナー:17:00-22:30
定休日:月曜日・第2,4火曜日
IG:https://www.instagram.com/taiwan_madam/
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