EXPOいくのヒートアッププロジェクト マンスリーヒートアップ企画者に聞く~第4回 『 No.89 墨にふれる 筆であそぶ ヒートアップVER.』


万博をきっかけに、まちの熱量をあげる『EXPOいくのヒートアッププロジェクト』。
今年は『マンスリーヒートアップ100』として9月15日~10月20日の1ヶ月間、生野区各地で、生野区を盛り上げたい人たちによる様々なプログラムが開催された。そのプログラムの企画者に、どうしてこの企画を立ち上げたのか、また良かったことや苦労したことなどをインタビューする企画『マンスリーヒートアップ企画者に聞く』。第4回は墨のイベントを立ち上げたあさみさんと西尾貴美さん
〜人が人を呼び、波紋のように繋がる墨の輪 〜

偶然の出会いから企画することに
奈良墨を用い、文字にとどまらず絵を描くなど自由な表現を楽しむ場、みんなの書くひろばを主宰するあさみさんと、その活動に共鳴し、自らも同様の取り組みを始めようとこぶたの間を立ち上げた西尾貴美さんにお話を伺うため、彌榮神社近くのカフェを訪ねた。

奈良墨(奈良墨とは奈良県で生産されている固形墨のこと。その生産は1400年に渡り職人の手によって受け継がれている。※以下墨と記す)に魅了されて、みんなの書くひろばを主催していたあさみさんと、当時はただ珈琲を楽しみに来ていた西尾さんが出会った場所だ。お互いそれとなく紹介され後日Instagramで西尾さんが直接DMを送ったのが仲良くなったのがきっかけ。 普段は自分からそんなに積極的に連絡を取ることはしないと言う西尾さんだが、この時は何か感じるものがあったそう。 なんだか楽しそうという気持ちがお互いを結びつけた瞬間だった。
そんな時、偶然『マンスリーヒートアップ100』の企画に参加しないかと声がかかり、知り合って間もないのに、あれよあれよという間に『マンスリーヒートアップ100』の企画としてワークショップを開催する運びになったそう。
初めての自主開催──世代を超えた交流
った。
あさみさんは過去に行政側が設定したイベントを実施することはあったが自主的に行うワークショップは初めてだった。「周りの方々にとても助けられました」と何度も話す姿が印象的だった。
老若男女が参加した今回の企画。おじいちゃんからギャル、小さなお子さんまで幅広い方々が墨に触れ、文字や絵を書いて楽しんでくれたそうだ。

多種多様な形と大きさの墨があり、墨の原料となるにかわ(膠)やすす(煤)の話、墨職人たちの話を伝えることも行った。
「教えられていない小さな子どもでも、墨を自然に磨りました」と話す西尾さん。とても印象的な出来事があったそう。「若い人が来て、自分の表札を書いた方がいたんです。 その後、引っ越し先の写真も送ってくれて感動しました」
初イベントだったにも関わらず本当に自然な流れですべてが進んでいき、楽しめたと話すお二人。普段は人前に出たり、話したりするのにとても緊張するタイプなのに今回のイベントでは全く緊張せず出来たのでやって良かったそうだ。
人がつなぐ輪──生野区で広がる支え合いの力
ただ、チラシを作成するのに苦戦したようでどうしようかと困っていたら、周りの人たちが助けてくれ事なきを得た。集客にも悩み、なかなか人が集まらなくてどうしようかと困る事もあったが、蓋を開けると知り合いが別の知り合いを呼んで来てくれたり、口コミで広めてくれていた。
「生野区の強みは、人との繋がりがとても濃いし、助けてくれようとする人ばかりなので、救われました」と振り返るあさみさん。
あさみさんと西尾さんが頑張っているのを見た周囲の人々があらゆる場面で手助けしてくれたことに感謝しかなかった。
その成果がリピーターという形で現れている。別のイベントの際に、リピートして戻ってきてくれるお客様が出てきた。固定のファンがついた証拠だった。
「生野区の人の繋がり方は今までにない広がり方。まるで波紋のように徐々に広がっていくのがすごい。生野区ならでは!」と破顔した。
お孫さんから奈良墨を磨って書く体験話を聞いたおばあちゃんが温かい感想を送ってくれたり、海外からの人にも同じ体験の場を提供しているあさみさんは、生野区だからこその繋がりを楽しんでいる。

新たなつながりと可能性
活動2年目で、新しい展開が広がっている。 ともにイベントをしてきた西尾さんが個人で墨イベントを主催したり、他の方とのコラボレーションを行い、活動の輪が広がっている。 DJと墨、活動の幅も様々だ。
あさみさん自身、墨が好きだったのが、イベントをすることで多種多様な人や新しい墨との関わり方も知れるようになった。「私は、参加してくれた人が次は自分でもやってみたい!と言ってくれることが嬉しいんです。自分でも知らなかった新しいコラボレーションを提案してもらえることで、また私自身に新しい価値観が巡ってくるので嬉しいです」 とあさみさんは言う。
墨が繋ぐこ゚縁は、これからも勢い良く伸び続けていきそうだ。



